コラム:つくること 7月参加作家さん

7月に手創り市に参加して下さった作家さんからのコラムをお届け致します。
猛暑のなか、倒れそうになりながらの市でしたが、
それを吹き飛ばすぐらい素敵な作家さんとの出会いがたくさんありました。
8月も素晴らしい市になりますよう。

・・・・・・・

■月日工藝さん


つくること。

朝の10時、工房の扉をひらく。
窓をひとつずつ開ける。
夏の風が部屋を通り過ぎる。
柏手をうつ。
一日のはじまり。

ゆくゆくは地に足をつけて暮らしたい。仕事をしたい。
そう思いながら、色々な所で働いて、色々な人に会って、色々な事があった。

その間に感じた
「自分が大事にしたい事」。

その「大事にしたい事」を守りながらモノを作るには
フリーで作る事でしかないのだなと感じ、工房を開いたのは去年の事。

「独立」という大それた事ではなくて、
あくまでも自然体にモノを作れる、モノと向き合える箱が必要だったので
「その箱が出来ました」という程度の事なのだと自分では思っている。

ある時、「何にも属さずに、一人でやることに不安はないの?」と友人に聞かれた。
「まったく不安がない」と言えば嘘になるけど
自分には「この手」があるから大丈夫だなと、
何となく思った。

「この手」があれば何でも作れる。
大げさに言えば家も作れるし、家具も作れる。
火だって起せるし、料理もできる。
金属を加工するのも、ジュエリーをつくるのも、全て「この手」。

「この手」によって、色々な物を作り、そして私は生かされている。

だから私にとって「つくること」とは「生活そのもの」の事なのかと思う。
全然特別なことじゃない。


「手創り市」に参加させて頂いたのは今年の6月から。

このような野外の催しに出店すること自体初めてだったので、
最初は不安でしかたなく、一人で大丈夫かな〜なんて心配ばかり。

でもいざ始まると、楽しくて楽しくて仕方ない。
お客様も、他の出店者の方も、スタッフの方も皆さん温かくて
一日中泣きそうなくらい感動していました。

一度参加しただけで、色々な新たな繋がりができて
すごいな〜「手創り市」と、数日ぼ〜っとしてしまったくらい
私には衝撃的なことばかり。

もうそれからはすっかり虜です。

お客様との会話、他の出店者の方とのふれあい
スタッフの方々の情熱、どんどんつながる新しい輪

一か月後の「手創り市」を楽しみに
今日もまたいつもの工房へ。

「あのお客様、こういうの欲しいって言ってたな〜」
「この形で小さいの作ってみようかな」

お客様の声を思い出しながら
机の上で「あーでもない」「こーでもない」

そんな毎日がおくれる事がまた、
楽しい。


月日工藝




■カミヤマアキコさん




わたしの「つくること」は
柿渋で布を染め、茶色の布をつくることから始まります。

茶色はもともと好きな色で、洋服からインテリア・・・気がついたら車まで茶色。
そんなわたしなので、褒め言葉しか出てきませんが
柿渋染の茶色には、優しくて、力強くて、どことなく素朴で、
【味】があるところに魅力を感じています。

気候によってかわりますが
平均4回以上は染めの作業を行っています。
染める→干すを繰り返して、だんだんと色づいてくる布を眺めることが
今、一番の「つくること」の楽しみです。

「つくること」で自分と向き合っている実感があります。
普段は、頭の中先行で物事を考えがちなんですが
手を動かすことで、自分の感覚がリセットされているような気がして。
それは染める作業だけではなく、【味】のある色の布をどう活かそうか・・・
布を眺めながら、どんなカタチに仕上げようか・どんな色合わせにしようか
などと考えているときにも当てはまります。

自分の感覚で、色やカタチをつくるというのは
とても楽しくて有意義なこと、なんですけど
果たして自分のつくっているものは、魅力があるのだろうか?
わけのわからないものに仕上がってないだろうか? と不安に感じることもあります。

柿渋染を通じていろいろな人と出会いたい、と強く思っているので
「つくること」で満足して終わり、にはしたくないです。

手創り市などのイベントは、ぽろっとこぼれ出た感想を聞けるので貴重な場です。
わたしが一目惚れして始めた柿渋染に足をとめた方から
「いい色ね」なんて言ってもらえると、「ちゃんと染まっているんだな」と安心します。

わたし自身、お客さんとして手創り市におじゃましたことがありますが
「どんな作品に出会えるだろう。そして、その作品をつくっている人はどんな人なんだろう」
という期待いっぱいで会場に向かっていました。

ですので、作家として参加する場合も、お客さんとの会話を楽しみたいと思っています。
染めに関心のある方から柿渋染について聞かれることもありますし、
バッグをつくっている方とは、カタチについてお話ししたり…
刺激や自信をもらって、新たにたくさんのことを吸収できる場、です。

柿渋染の【味】を活かしたものづくりをしたい、と心がけていますが
現時点では技量もセンスも「まだまだ」「もっともっと」なので
感覚を大切にしながら、これからも布と向き合っていきたいと思っています。



■アルニコインディゴさん


今回初めて手創り市に参加させていただきました、日本手拭いの店アルニコインディゴです。
普段は染め物工場で仕事をこなしながら、手の空いた時間に自分の作品を染めています。
染めはプロですが、自分のものを作るという意味ではプロとは言い切れません。
しかし、手拭いをつくることにかけては厳しい目で見ていますので、一切妥協は出来ません。
ダメな物は泣く泣く、近所にお配りします。
物を買ってもらうということは、ありがたいと同時に大変なプレッシャーとなります。
私の場合は染め物ですから、使用中、洗濯後にも気を配らないといけません。
色落ち、色移りも計算しながら染めるのは難しいことこの上ありません。
今回は夏の屋外での出店ということで、出店にあたり注意することがありました。
私の場合は特に植物性の染料を使ったり、自然の物を使ったりというスタイルではなく、
どのように使ってもらっても良い様に頑丈なて染めをしています。
その染料の中には、使い方によっては日光に弱いものもありますし、摩擦に弱いというものもあります。
ですから、今回は制作するときに夏の太陽に負けない染めで制作しましたが、その結果、昔ながらの染めに戻っていたことに今更ながら気付きました。

大事なのは売ることではなくて、末永く使ってもらえること。
その為の努力が大事だと私は思います。



■cocoonさん


どうも、こんにちは。cocoonといいます。

たまねぎの皮、紙袋、新聞、段ボールなど捨てられるものなどを使い、
名刺入れ、小物入れ、ノートなどをつくってます。

私にとってつくることは、日常なのだと思います。
そして自分らしさみたいなものをいちばん表現できるもの。

何かを見て刺激を受けたり、
新しい素材や表現を見つけたり
日常生活の見るもの感じるもの、
すべてのことがつくることにつながっているという感じ。

手創り市は初めて販売した場所なので思い入れがあります。
どういう反応があるのか、最初は作品を並べるのも恥ずかしかったことを覚えてます。
でもやってみたら意外と楽しかった。
自分の作品を通してお客さんと楽しく話せるとは思ってなかったので驚きました。

玉ねぎの作品は何で思いついたのかとよく聞かれます。
玉ねぎ染めをした後の玉ねぎの皮が目につき、表紙のないノートがあった、
だから何となく貼ってみた。それが始まりです。
もともと玉ねぎの皮の繊維っぽい感じは好きで、
何かを押し付けて貼るのも好きだった。それが重なってできたかんじです。
味のある感じが気に入り早速その年の手帳の表紙にしました。

それから名刺入れなどの小物も作り出し、改良などしながら今に至ります。
材料を買って何かつくるというのはあまり気が乗らず、
捨てられるもの、いらないものなどをできるだけ使いたいと思っています。
金具などは道に落ちているものを拾って使ったりもします。
さびなどいい感じになってたり、思いもよらないものに出会ったり。
その偶然出会う感じも好きなのです。

今回出すのは久しぶりでしたが、またいろんな出会いがあって楽しかった。
いろんな年代の方と話せるし、驚いてくれたり、笑ってくれたり。
私自身、ちょっと笑ってしまうものが好きなので笑ってもらえるとなんか嬉しいです。
見回してみるとみんな笑顔ですね。お客さんも出展者さんも。
みんなが楽しんでる気がします。
大鳥神社のゆったりした感じもいいです。
改良点を言ってくれる方もいてそういうのがまた嬉しかったりします。
お客さんからヒントをもらい、また新しい展開を考えてみたり‥

これからも自然のものや偶然の力を借りてつくり続けたいと思います。
また出展させてもらう時は立ち寄って頂けるとうれしいです。
ありがとうございました。




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手創り市スタッフ 市原歌織
info@tezukuriichi.com









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